インプラント治療を受けることが難しいケースひとつ目は、あごの骨の量が不足していることです。
インプラント治療は、あごの骨にインプラント体を埋め入れ、骨とインプラント体が結合することで噛む機能を取り戻します。そのため、インプラント体を埋め入れるために必要な骨の量や密度がない場合には、インプラント治療が難しいことがあります。
治療を行ったとしても、インプラント体があごの骨に定着せず、すぐに抜け落ちてしまう場合もあります。骨の量が足りない場合、骨造成という骨を増やす処置を行うことで、インプラント治療が可能となる場合もあります。
ただし、治療にかかる費用や期間は増えますので、治療前に歯科医師とよく相談してくださいね。
ふたつ目は骨の成長段階にある場合です。
あごの骨が成長段階にある時期にインプラント治療を受けると、骨の成長に伴いインプラントの位置がずれてしまったり、骨の成長を妨げてしまったりと、悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
身長が止まる頃が骨の成長が止まる目安ではありますが、20歳前後でのインプラント治療は歯科医院で検査を受け、歯科医師と相談の上、慎重に判断してくださいね。
みっつ目は口腔内の状態が悪い場合です。
インプラント治療を検討する際、お口の中の健康状態が治療の予後を左右します。特に重度の歯周病に罹患している場合、インプラント治療をするうえで必要なあごの骨を溶かしてしまうため、治療の成功率を低下させてしまいます。また、治療後にインプラント周囲炎を発症するリスクが高まり、埋め入れたインプラント体が抜け落ちてしまう可能性もあります。むし歯も同様に細菌感染の原因となり、インプラント治療の成功率を低下させます。
インプラント治療を検討している方は、適切な治療を受け、事前にお口の中の環境を整えるようにしてください。
よっつ目は、持病のある方です。
糖尿病や高血圧、腎臓疾患などの持病がある方は、インプラント治療が受けられない場合があります。
糖尿病に罹患している方は、免疫力や身体の抵抗力が低下する傾向があります。その影響でインプラント手術後の傷口の治りが遅れることで、細菌感染のリスクが高まります。そのうえ、糖尿病は歯周病発症のリスクを高めてしまうため、治療後にインプラント周囲炎を引き起こす可能性もございます。
高血圧の方は、動脈硬化が進行している可能性もあり、脳や心臓の疾患を併発している場合があります。このような疾患がある場合、インプラント手術中のストレスによって血圧が急激に上昇することで、突如脳出血や心筋梗塞などを引き起こしてしまう可能性があります。
また、腎臓疾患のある方は、免疫力が低下しやすく、糖尿病の方同様に傷の治りが遅れ、細菌感染のリスクが高まります。特に人工透析を受けている方は、手術中に細菌が体内に侵入すると、腎臓に移動する可能性があります。
こういった理由から、特定の持病のある方はインプラント治療が受けられないケースがあります。ただし、症状をコントロールできており、数値が安定している場合は、インプラント治療を受けられることもあります。その場合は、主治医と歯科医師との連携が必要ですので、必ず歯科医師に持病とその程度、飲んでいるお薬などをお伝えください。
さらに大前提として、インプラント治療には外科手術が伴います。そのため、これまでご紹介したケース以外にも、妊娠している方や麻酔を使用できない方、手術に強い恐怖心のある方などは、インプラント治療には向きません。
また、インプラント治療自体は問題なく行える場合でも、お勧めできない方もいらっしゃいます。
それは、治療後に定期的に歯科医院に通院することができない方です。インプラント治療の最大の敵はインプラント周囲炎ですが、重症化するまでは自覚症状が出ないことが特徴です。そのため、症状が現れて気が付いた時にはインプラントを残すことが難しく、取り除かなければならない場合もあります。
インプラント周囲炎の対処法としては、予防と早期発見が重要ですので、定期的に歯科医院を受診する必要があります。3か月から半年に一回の受診が難しい場合には、インプラント治療を受けても長く使うことができない可能性があるので、インプラント治療をお勧めできません。また、ご自身でのケアが難しい方も同様の理由で、インプラント治療をお勧めできません。
その先数年、十数年後のことも考えて治療を選択してくださいね。
今回は、インプラント治療を受けることが難しいケースについてご紹介しました。当てはまる方がすべて治療を受けられないわけではないので、まずは歯科医院で相談してくださいね。